政治解説・コラム

通訳をスケープゴートにした安倍総理

投稿日:2014年2月12日 更新日:

安倍総理がダヴォス会議に出席し、昨今の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に例えたことが欧米で物議を醸しました。今の日中関係は当時の英独関係と「似た状況にある。」と通訳が訳し、この一文は総理が発言していない「補足」なので、通訳にクレームをつけたとのこと。外務省の役人が訳さないで外注したのが悪いとか、今後は外務省が通訳を養成すべきだとか、まるで安倍総理のスピーチには何の問題もなかったかのような報道ぶりなので、元通訳として一言書いておこうと思います。(ちなみに外務省には語学専門で採用されている人もいますし、公費で通訳学校に通っているキャリアもいます。けれどもこの人達には通訳以外の仕事もあり、特に同時通訳は必要な時だけたまにやってできるようなものではないので、プロを頼むのは当たり前です。)

まずこの手の話、通訳をスケープゴートにした政治家で一番有名な例として業界に伝わっているのは、中曽根康弘元総理の「不沈空母」発言です。中曽根元総理は日本語で「不沈空母」と言い、それを通訳が“Unsinkable fleet”と英訳しました。別に誤訳だとは思いませんし、この時の通訳はもちろんトップクラスの人物です。だけどとにかく通訳のせいということにして、総理は逃げてしまいました。

以来こういう話は聞かなかったのですが、私はタカ派総理の思考回路、つまり比喩の選択にこそ根本的な問題があるのではないかと思います。確かに「似た状況にある。」と一言補足したのは余計だったかもしれません。基本的にスピーカーが発言していないことは言わないのが原則ですが、スピーカーの話が急に飛躍した時、「えっ、何?」と一瞬思うような時に、意味が通るように通訳が補足して話を追うことがあり、同時通訳の場合はそういうことが起こり得るのです。

今回の安倍総理の発言は、日本を不沈空母に例えた中曽根総理同様、比喩のセンスに問題があります。そもそも比喩と言うのは「似ているから」用いるのであり、通訳が一言添えなかったとしても、やはり第一次大戦前の英独関係を引き合いに出したこと自体が好ましくなかったのです。安倍総理が不必要に周りを刺激しまうことは一国のリーダーとして問題であり、それを他人のせいにして済ませてしまう本人と、批判精神を失ったメディアの双方共に悪いと私は思います。今後こういうことがなければよいのですが、総理や総理周辺に問題意識がなければまた起こり得るでしょう。「お友達内閣」と「政高党低」の状況では、誰も物を言わないのではないでしょうか。

今回スケープゴートにされた通訳者、そして今も業界で活躍するかつての私の同僚達には「めげずに頑張れ」とエールを送りたいと思います。

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