2015年3月9日(月)~21日(金)までの丸2週間、ニューヨーク国連本部にて開催された第59回国連婦人の地位委員会(UN Commission on the Status of Women)に初めて参加しました。私は女性運動というものにほとんどご縁がなかったのですが、去年、女性議員を増やそうと活動している知人からスピーカーとして日本の団体に推薦していいかと言われ、初めてCSW総会なるものを知りました。毎年3月頃に2週間、国連本部で開かれる総会であらゆる分野の女性問題について議論され宣言文が採択されます。(もちろん採択に至らない時もあります。)日本の場合は伝統的に政府と民間の共同体で参加しているようです。わかりやすく言うと、女性問題に詳しい学者等民間人を政府代表として選び、外務省や内閣府の担当者が代表をサポートするという体制です。国会議員は3月という予算審議の時期で渡航するのが難しいので、政府三役の誰かがとんぼ返りするような日程で対応しています。今回は宇都隆史外務大臣政務官が2日間ほど滞在したようです。
CSW59は“北京+20”、つまり北京女性会議から20年目にあたる節目の大会だったので例年より規模が大きく、内閣府ホームページ(http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_csw/chii59-g.html)によると期間中の参加者は8,600人だったそうです。私は今回、トルコの団体から声をかけていただきました。去年の話は他の方に決まり、それっきり忘れていたところ、国際交流でお付き合いしている「さくらーれ日本トルコ女性交流会」からスピーカーのお話をいただきました。2年続けてCSWの名前を聞いたので何かご縁があるのだろうと思って行くことにしました。
2週間以上の滞在ですから色々な経験をしました。まず3月8日(日)にアポロシアターで開催されたNGO CSW FORUMというオリエンテーションに参加しました。アポロシアターはハーレムにあるのでどうしてそんなところで開催するのかと思いましたが、昔よりだいぶ治安がよくなったのですね。日中なら普通に地下鉄で行って大丈夫でした。会場では“I am 20”と書かれたうちわが配られ、この日は“International Women’s Day”(国際女性デー)なので会議終了後、全員で行進に途中参加するのだということ。タイムズスクエアに移動して国連から行進してきた行列に合流し、最後数ブロックを一緒に歩きました。ゴール地点のタイムズスクエアで主催者やゲストのスピーチを聞きながら、いかにもニューヨーク的というか、国際女性デーというイベントの大きさに驚きました。
3月8日の国際女性デーは近年各国で認知度が高くなってきたので、もともとCSWはこの日を含めて2月下旬から開催されていたところ、政治家が自国のイベントに参加する為、開催時期をずらす傾向にあるそうです。それに比べると日本はなぜ国際女性デーの認知度が低いのかと思ったら、聞くところによるとイベントの主催団体が共産党系の為、拡がりを欠いているのだそうです。女性運動=左翼というイメージが日本で定着しているのはこういうところに原因があるのでしょう。国連では女性の社会参加を推進することだけでなく、それ以前、つまり教育の権利や児童売春の問題等、宗教や貧困に根差したあらゆる問題に取り組んでいます。
3月9日(月)、国連総会議場に各国政府代表団が集まり、潘基文(パン・ギムン)事務総長出席の下、第59回CSWが開会しました。これから2週間、国連内の会議室や周辺会場にて政府間交渉と並行して数多くのサイドイベント(政府主催)、パラレルイベント(NGO主催)が開催されます。
開会式終了後、午後一番で行われた国連日本代表部とUN Women(国際女性の地位協会)共催のサイドイベント「女性差別撤廃条約とジェンダーに基づく暴力:北京会議後20年の成果と課題」に直行。その他、日本のサイドイベントとしては13日(金)に国連日本代表部と日本のNGO共催で「高齢社会におけるジェンダー平等:日本高齢女性の活躍と課題」、16日(月)に国連日本代表部とUN Women共催でフジコ・ヘミングのピアノコンサートが開催されました。また3月12日(木)と19日(木)には国連日本代表部にてNGOに対する政府間交渉のブリーフィングが行われました。日本は政府代表自体が政府と民間の共同体ですから、政府とNGOの関係も良好で交渉の状況等がきちんと説明されています。トルコの方は政府とNGOの連携が全く取れていなくて、今回、日本は組織された国だと改めて感心しました。
国連総会議場では3月10日(火)から各国政府代表のスピーチが始まり、アメリカからはヒラリー・クリントン女史が登場。彼女は北京女性会議でもスピーチをしており“北京+20”の今年もスピーチをしたのでした。ちょうどこの時期、ヒラリー氏が次期大統領選にいつ出馬するのかという噂でニューヨークは持ちきりで、「ヒラリー・クリントンがニューヨークの物件を視察した。(選挙事務所か?)」というようなニュースが流れていました。ニューヨーク州が選挙区で、アメリカ初の女性大統領への期待が高まる時期にCSWに登場するあたりはさすが戦略的です。(4月12日(日)、ヒラリー・クリントン氏は正式に出馬表明しました。)
私にとってのメインイベント、Peace Islands Institute主催の“Micro-Finance and Vocational Training for Empowerment of Women”は11日(水)午後に開催されました。実は女性と政治というテーマを出していたのに、突然マイクロファイナンスと女性のエンパワメントについて話をしてくれと言われてさあ大変!日本はアジアや太平洋諸国でマイクロファイナンスの実績があるから紹介してほしいというのが依頼の趣旨だったので、結局JICAから資料を取り寄せ、スリランカやネパールの事例について10分程お話しました。スピーカーはトルコの女性(NGO職員)、タイの女性(自然薬品を扱う企業のドクター)と私の3人。NGO、企業、政府とそれぞれ異なるアプローチからの支援内容になりました。なお会場でお会いした経済学者の日本女性は突然、政治関連のNGOセッションに駆り出されたそうで、スピーカーが逆だったらよかったのにとお互い笑ってしまいました。世の中ってうまくいかないというか、そういうものですね…。
3月17日(火)はせっかくニューヨークに滞在しているので五番街までSt.Patrick’s Day(セント・パトリックスデー)のパレードを見に行きました。アイルランドの聖人、聖パトリックの命日である3月17日を祝うSt.Patrick’s Dayはニューヨークにおいて盛大な行事です。五番街にある聖パトリック教会ではニューヨーク市長などが出席してミサが行われます。その後パレードが始まり、五番街は何時間も交通規制が敷かれます。消防(人気者!)や警察(不人気!)など公務員のパレードから地元高校生まで市をあげて参加しています。沿道からの反応で人気度がわかったこともアメリカ的でした。
近年、日本にもセント・パトリックスデーが広がっていて小泉八雲(アイルランド人)が滞在した松江市でもイベントがあるのですが(地元の活動報告参照)、セント・パトリックスデーはやはり3月17日であるべきと今回改めて思いました。パレードを行う為に3月の週末に設定するのはクリスマスを毎年変えるようなもので違和感があります。私の場合はカナダにいた頃、セント・パトリックスデーに馴染んでいたので松江でも懐かしい気がしたのですが、17日じゃないのは妙な感じがしていました。祝うなら3月17日に緑色を身に着けてパブや居酒屋に繰り出せばいいのであって、たまたま土日にあたる年にパレードを行った方が特別なイベントとして演出できるのではないでしょうか。今回ニューヨークでお祭りの原点に返ってそう思いました。
ニューヨーク滞在中、セント・パトリックスデーの頃は好天でしたが、到着日も最終日も雪!特にCSWの最終日は吹雪だったので、滞在中に春らしくなったと感じたのは気のせいでした。天候も含めて色々貴重な体験ができ、充実したニューヨーク滞在、CSW59でした。