津和野町のはずれ、旧日原町の山間部に位置する左鎧(さぶみ)小学校が存続問題で揺れています。SOSが入ったので、急遽京村牧場の「森のようちえん」まで出かけてきました。この日は園児がバスで他の施設に出かけていて子供達には会えなかったのですが、「森のようちえん」の環境と左鎧小学校の状況についてはよく理解できました。正直言ってここまで追い詰められているとは思わず、今から何ができるか頭を悩ませています。左鎧小学校は下森博之町長の母校なので、勝手な思い込みですが地元中の地元は守ろうとするのではないか、私が心配しなくても左鎧は大丈夫ではないかと思っていました。
状況をご説明しましょう。津和野町には生徒数16人以下の学校は統廃合するという基準があります。左鎧小学校の生徒数は6人ですからもちろん廃校の対象です。事実もっと大きな小学校が既に廃校になりました。ただ左鎧小学校が他の小学校と違うのは、地域で子供を増やそうという取り組みが始まっていて、幼稚園には子供が増えているのです。この活動の中心人物が幼稚園教諭を経て津和野の京村牧場に嫁いだ京村まゆみさんです。町議でもある京村さんは自分の牧場で「森のようちえん」を始めました。これはデンマークやドイツで始まった園舎を持たずに自然の中で子供を保育する方法です。この取り組みが反響を呼び、最近になって県外から引っ越してくる親子が現れ始めました。更に左鎧小学校の子供達が大人の努力を理解していて、何とか学校を残したいという強い気持ちを持っています。
昨年左鎧小学校を卒業したS君は、移住者の住宅を用意しようと古民家の改修費用をクラウドファンディングで600万円集めると目標を立て、なんと706万5,000円も集めました。つい先日、改修工事が始まったところです。また左鎧小学校の目の前には移住者用の町営住宅を2軒建設中です。家の裏手の小学校が間もなく廃校になると聞いたらUターンやIターンの人がわざわざ越してくるでしょうか。
以上を総合的に考えると今、基準に満たないからと言って淡々と左鎧小学校を廃校にすることは、せっかく始まった地域の自発的な取り組みを行政が潰すようなものだと思うのです。それに町営住宅の予算も無駄になるでしょう。住民との意見交換会などが行われてはいますが、文科省から津和野に出向中の教育長の下で教育委員会が粛々と統廃合を進めようとしており、外部の人間が気を揉んでいます。左鎧の活動はNHKのドキュメンタリーで中国地方、全国版と共に放送されたこともあり、島根県も定住促進の取り組みとして注目し、クラウドファンディングで協力してくださった民間の応援団もついています。それでも地方自治の仕組みとしては町が廃校と決めれば決まってしまうわけで、既に統廃合された津和野の他の地域との関係もあり小さな町で非常に複雑な状況に陥っています。