独立行政法人の事業仕分けで廃止と判定された農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の農業者大学校。私は事業仕分けに関わっていたのでフォローアップに努めています。農業者大学校については存続の要望が地元のリーダー的な農業者から複数あったのですが、とにかく農研機構の予算の使い方がひどかった為、廃止は避けられない状況でした。筑波の研究施設内に3Dドームを建設して得られた社会学的な研究成果が「農村地帯の景観には灌木が必要」と言われた時は視察団一同唖然としました。その帰りに同敷地内にある農業者大学校に立ち寄ったところ、立派な建物に研修生どころか人の気配すらなく応対した人もうまく説明できなかったので存続の可能性が萎んでしまいました。もちろん農業者の育成が必要であることは言うまでもありません。事業仕分けが示した方向性は都道府県の農業大学等の研修施設を活かして地域主体の農業を目指すというものでした。
廃止が決定した後の卒業生の動きには目を見張るものがありました。一般社団法人アグリフューチャージャパンを立ち上げ、2013年4月、東京品川にアグリフューチャージャパンが運営する農業経営大学校が開校したのです。定員20名の全寮制(寮から校舎までは50分)で研修期間は2年。旧農業者大学校の卒業生によると全寮制の意義は大きく、寮生活で得られる結束力と生涯続く交流は後々全国に散って農業に従事する上で非常に役立つそうです。だから都道府県単位ではなく全国規模の農業研修の拠点を維持しようとしたのです。
この日、私は地元島根の卒業生と共に日本農業経営大学校を視察しました。今年2月に完成したばかりの農林中央金庫品川研修センター内にある校舎には教室、ゼミ室、図書スペース、ラウンジスペース、テラスがあり、当日は授業も行われていました。都心にありながらテラスには緑もあり快適な環境でした。この学校がよい形で発展していくように見守っていきたいと思います。