活動報告(ブログ)

都議会のセクハラやじに思うこと。

東京都議会における塩村文夏議員へのセクハラやじが海外にも衝撃的なニュースとして発信され、やじを放った鈴木章浩都議が名乗り出た後も物議を醸しています。

私は通訳時代に外国人記者クラブの会員になっているので(記者以外の会員枠もあるのです)、記者会見の案内もどんどん入ってくるのですが、6月24日(火)に開かれた塩村議員の緊急記者会見について、その案内文には「攻撃者達(Offenders)は何の対応もしていない。これまでのところ鈴木章浩議員1人が名乗り出ただけである。(訳)」と書かれています。つまり都議会がこの問題を徹底追及せず、トカゲの尻尾切りのように1人だけ生贄にして事なきを得ようとしていることが、とんでもなく時代錯誤な国家として外国人記者の目に映っているのです。きっと「日本は寛大でいいじゃないか。」、「日本は日本だ。」と思っている男性もあるでしょう。けれども例えばタリバンのようなイスラム原理主義組織が女性に教育は必要ないと学校を襲撃する事件を日本人が「信じられない!」と思うのと同じように、今回の一件が海外から「信じられない!」と驚きの目で見られていること、それが今や先進国の常識であることを日本はまず知るべきでしょう。

塩村議員に放たれたセクハラやじが一発レッドカードであるのは今更言うまでもありません。まず欧米諸国では、結婚というプライベートなことに他人は干渉しないというのが暗黙のルールです。日本では「早く嫁さんもらえ!」、「結婚しないの?」と上司やおせっかいおばさんが男性に対しても口にするので、必ずしも女性だけに向けられる言葉ではないのが現状です。ただ晩婚や少子化についてまさに議会で質問している女性に対してのあのやじは、「女が結婚せず子供を産まないから悪いのだ。」という明らかなセクハラとしか言いようがありません。「女性は産む機械」と発言した柳沢伯夫元厚生労働大臣を思い出しました。鈴木章浩議員と柳沢伯夫元大臣は本音を共有していて、残念ながらこういう男性はまだ世の中に多いと思います。世間体を気にして政治的には「女性の活用」、「子育て対策の充実」と言ってはみるものの、ちっとも理解しようとしていないこと、問題解決にあたるべき厚労大臣自ら「女性は産む機械」なんて言ってしまう国ですから少子化がどんどん進行するのは当然でしょう。

「早く結婚した方がいいんじゃないか。」というやじの他にも「産めないのか。」という声が聞こえ、これは更に悪質な最低のやじです。このまま放置しておくと、「日本は女性蔑視がひどい国だ。」、「オリンピックが開催される東京とはそういうところだ。」というイメージが定着するでしょうから、オリンピックに向けてイメージアップを図りたい都議会の足元からのこのセクハラやじはボディーブローのように効いてきます。鈴木議員1人に罪を被せて黙り込んでいる他のセクハラ議員は卑怯者であり、本人が名乗り出れば一番ですが、今後の為にも少なくとも東京の有権者には知る権利があると思います。

それから名乗り出た鈴木議員を見て残念だったのは、私とたいして年の差がなかったこと。「女性は産む機械」発言の柳沢氏と鈴木議員とでは一世代違うのに、男性側の意識が全く変わっていないことが改めて証明されたようなもので、これも少子化が急速に進んだ大きな原因です。私は雇用機会均等法の第一世代に属し、これからは女性も働く時代だと勢いよく社会に送り出されました。「クリスマスケーキ」という言葉を無視し、30代での結婚が珍しくなくなり、私達がアラフォーになった時、いよいよ少子化が深刻化してきました。私を含め、同級生にこれだけ未婚、晩婚、離婚が多ければ世の中少子化するわけよね…と納得してしまいます。その背景については1冊本が書けるほど言いたいことがたくさんあるのでここでは書きません。ただ言えることは、保守的な男性と働きたい女性が同世代に重なっている場合、男女のマッチングは全くうまくいきません。これがバブル崩壊後の就職氷河期世代になると自信や意欲が平均的に下がり、草食系男子という言葉も生まれたように男女が結婚しない理由が変わってきます。

もし政府がイメージアップの為ではなく真面目に少子化対策に取り組む気があるなら、少子化問題は雇用問題なのだとまず認識する必要があります。成長戦略に女性の活躍を掲げながら、残業代ゼロ法案やら配偶者控除の廃止やら第三子からの子育て支援やら言い出す安倍政権は、私から見ると「ズレている。」としか言いようがありません。そもそも第一子さえ生まれないことが問題の社会で「産めよ殖やせよ働けよ。」と号令をかけてどうするんでしょうか。相変わらずわかってないなあ…と思います。

最後に国会のやじの話をしておきましょう。私は「やじは議会の華」とは思いません。本会議場や予算委員会のやじにははじめ驚きました。学校では「人の話は最後まできちんと聞きなさい。」と教わってきたのに、国会があんなにうるさいのは不思議でした。お世辞にも品位があるとは言い難いので、外国の要人が本会議を傍聴している時などは「お願い、今日は恥ずかしいから黙ってて…。」と内心祈ったことが幾度もありました。(やじの常習犯はたいてい決まっています。)国会でやじがなくならない理由は慣習として継承されているからで、誰かが代表質問する時、その会派で「応援よろしくお願いします。」という指示が出るのは、つまり「その通り!」、「いい質問だ!」とエールを送ることを言います。するとそれに対して「○○はどうするんだ!」というようなやじが飛ぶわけで、この応酬が与野党で繰り返されるのです。気のきいたやじ、思わずクスっと笑ってしまうやじもあり、また私が初めて代表質問で話し出した時には「大きな声で頑張れ!」と他の会派(たぶん自民党)から声が飛んできたので、声の大きさを早いうちに修正することができました。ですから不規則発言がすべて悪いとも言えないのですが、たぶん諸外国の議会はもう少し静かだと思うので(見学したドイツ議会は静かでした)やっぱり日本の国会は変だなあ…と思っています。

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