新しい人権
☆議事録☆
亀井亜紀子委員
みどりの風の亀井亜紀子でございます。
両先生に二つ同じ質問をさせていただきます。先に質問だけ申し上げます。
一つ目は土地の権利についてです。憲法上の人権というのは、国家と国民の間の人権の規定である、一方で公共の福祉という概念があるというご説明がありました。戦前の反省から日本の憲法解釈というのは、どちらかといえば個人の尊厳に重きを置かれてきたのではないかというご見解がありましたけれども、欧米は個人主義であります。けれどもその中で土地の権利については日本は少々強いのではないかというような感覚を私は持っておりまして、これがまた問題視されたのが東日本大震災の時であったと思います。つまりその津波の被害に遭って危険であると、高台移転を進めたいけれども、やはり今のところに住み続けたいと、その人達に動いていただくことができるのかどうかと。そういうような問題意識を持ちましたが、憲法改正をしないで今の現行上の解釈で、このような場合には公共の福祉が優先されるのですというか、ここまでが公共の福祉ですと言うことができるような何か方法がありますでしょうか。これが1点目です。
2点目は、これプライバシー権に関することですが、個人情報保護法です。私は人権のインフレ化はやはり懸念をしております。個人情報保護法1本作っただけで過剰ではないかという反応が社会に、匿名社会になった部分があり、十分に例えば学校の連絡網が作れないとかそういう色々な弊害が出てきて、その権利というのは保護されていると思うので、安易に憲法に書き込まない方がいいだろうと考えております。仮にプライバシー権を書き込んだ時に、個人情報というのはそのプライバシーの一部ではないかと私などは思うので、どこまでがその憲法上保障するプライバシー権で、どこが違うのか、部分的にはもう法律でできているではないかというような混乱が起きるのではないかと思うのですけれども、いかがお考えでしょうか。
小坂憲次憲法審査会会長
それでは土井参考人からよろしいですか。
土井真一参考人
まず土地の問題でございます。
土地の問題に関しましては、憲法では二十九条の条文になります。特に二項、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」、それから「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」というふうに規定しておりまして、憲法学におきましても財産権の保障についてはかなり立法裁量があるのだというふうに理解されるのが原則でございます。その意味では思想、良心の自由ですとか表現の自由など、精神的自由とはやっぱり違うんだということで、その公共の利益、あるいは公共の福祉というのをどういうふうに考えるのかという問題であろうと思います。
高台移転の問題につきましては、結局誰の為にそれをするのかが問題でして、基本的にご本人の為にそれをするのだという話になった時に、ご本人が嫌がっていることをどう考えるのかということが問題になるのが少し難しい点なんだろうと思いますが、必ず憲法改正をしないとできないのかというのは、それは最終的に最高裁に行ってみないとわかりませんけれども、一般論としては比較的立法者が適切に公共の福祉を判断すべき領域だと考えられていると思います。
それからプライバシーの過剰保護の問題につきましてはご指摘の通りで、憲法に書き込むとしましても恐らく個人情報保護法のような詳細な規定は置けないんです。基本的にはプライバシーと書くのか、私生活上の自由と書くのか、いずれにせよ抽象的な文言しか用いられません。結局それが何を意味するのかということについては判例を待たないといけないということになるのであれば、それはやはり最初に立法で内容を明確にして、国民的な合意が得られて、こういう内容であるねということが明らかになってから書き込んでいくというのが一つの方法だと、先程も申し上げているのはそういう趣旨でございます。
以上です。
小坂憲次憲法審査会会長
それでは高橋参考人、お願いします。
高橋和之参考人
第1点目の方ですが、確かに日本は土地の権利が強すぎるんじゃないかということがよく言われるんですけれども、憲法上、諸外国と比べて日本の財産権が強すぎるということはないんだろうと思いますね。実際上、制限することについて、立法者がどの程度確信を持って憲法の許す範囲内でできるかということであり、今、土井参考人が言われたように、憲法の解釈としては、公共の福祉によって相当広い制限が可能だと考えられております。
ですから憲法上の問題というよりは立法上どこまで踏み込んでやるのかという問題であり、やる覚悟があれば、場合によっては国家補償が必要な場合もあるでしょうけれども、相当程度できるだろうと思います。憲法を改正しないとそれができないということはないんではないかなと思っております。
2点目の個人情報の方ですけれども、これは確かに法律で既にもう保護されておりますから、この法律で不十分なところを直していくということをしばらくやって、その上でこのままだと将来、将来の多数派が後退させる危険が強いというふうに感じられるのならば、これは憲法に書いておくという意味がありますけれども、そうでないならば、あえて憲法に書く必要もないかなというのが私の感じであります。
以上です。
亀井亜紀子委員
以上です。ありがとうございました。