みどりの風の亀井亜紀子でございます。
政府四演説について、みどりの風を代表し質問致します。
我々は何の為に国会議員を志したのかと総理は演説で問いかけました。私は2007年夏の安倍内閣の時に初当選したのですが、当時最も熱く訴えたことは米国主導の新自由主義、いわゆる市場原理主義からの脱却でした。この思想は規制改革を伴うことが特徴です。小泉・竹中路線の構造改革は、総合規制改革会議や規制改革・民間開放推進会議を設置して進められました。安倍内閣においても、聖域なき規制改革を進める為、規制改革会議が発足しました。経済財政諮問会議も復活し、産業競争力会議のメンバーには竹中平蔵氏が入っています。
そこでお尋ね致します。
総理は官から民へのスローガンで進められた規制緩和や郵政民営化は正しかったとお考えですか。
先般、改正郵政民営化法に自民党が賛成したことは、民営化担当相であった竹中氏の間違いを認めたに等しいと思うのですが、いかがですか。
構造改革の結果は惨憺たるものだと私は思います。タクシーやバスの規制緩和は運転手の賃金低下やツアーバスの事故につながりました。大学設置基準の緩和や司法制度改革は学部や法科大学院の定員割れを引き起こし、問題が山積しています。総理、六三三四制の見直しによる教育再生より、大学や法科大学院の見直しが急務ではありませんか。
労働分野の規制緩和も罪深い政策です。
総務省の発表によれば、契約社員や派遣社員などの有期雇用労働者は約1,410万人、全労働者の4人に1人です。私は労働者派遣法の改正による規制強化を目指していました。ところが政府提出法案は民自公の三党合意により大幅に修正されました。
修正案の趣旨説明に対する自民党議員の質疑は次のようなものでした。資本主義社会では、労働者には働き方を選ぶ権利がある、企業にも雇い方を十分選択する権利がある。企業が人を雇いにくくする民主党の政策は、雇用を減らし、失業を増やし、国の競争力を奪い、空洞化を加速させる。登録型派遣や製造業務への派遣を禁止するなどという現実離れした案を二度と持ち出すことがないよう強く求める。私はこれを聞いて修正案に反対しました。同時に非正規社員を正社員化する改革は無理だろうとも思いました。雇用形態にとらわれない賃金制度、同一労働同一賃金の仕組みを日本流に取り入れる方が現実的だと今は考えています。
先日、厚生労働省が正社員と非正規労働者の中間に位置する准正規労働者の創出に乗り出すと報道されました。中二階を設けて労働者を階層化した場合、問題がより複雑化しませんか。厚生労働大臣の見解を伺います。
TPPについて質問致します。
TPPは規制改革と切り離せない問題であり、言うまでもなく米国からの外圧です。総理は貿易や投資のルールを国際的に調和していかねばなりませんと自らおっしゃいましたが、これこそがTPPの本質であり、関税撤廃よりも規制調和、つまり各国のルールを米国流に変えることを狙っています。総理、なぜルールを調和する必要があるのでしょうか。
今回の日米共同声明は、自動車と保険がターゲットであることを示しています。自動車については、米国が輸入車に対する関税2.5%を当面維持すると伝えています。一方、日本では輸入車に対する関税は既に撤廃されており、その上、軽自動車の規格がルール違反だと言われては交渉参加に何のメリットもありません。
保険についても、医療保険の市場拡大を狙う米国が日本の国民皆保険制度、かんぽや共済を非関税障壁だと攻撃するでしょう。郵政民営化も米国の年次改革要望書による外圧が原因でした。民営化見直しでようやく郵便、貯金、保険の三事業を全国一律に扱えるよう戻したのに、TPPに参加すればまた逆戻りです。
政府は復興財源として平成27年度までに4兆円の郵政株の売却を予定する一方、新規事業の認可には後ろ向きです。株式の価値を高めずに売却することは、国民の預貯金を安値で放出することになりませんか。円安が続けば資金は海外に流出するでしょう。これはアベノミクスに関わる問題です。
米国の財政は実質破綻しており、歳出の強制削減が発動されました。一方、日本の国債発行残高が1,000兆円あっても財政破綻しないのは、国民の個人金融資産が1,500兆円あるからです。つまり国債を買い支えている国民の預貯金が海外に流出する政策は決定的に国益を損ねます。アベノミクスが成功するか否かは、日銀の金融緩和で増えた資金が国内に循環するかどうかにかかっています。
更に物価上昇に伴う所得の増加がなければ消費は伸びず、景気も回復しません。総理、来年春の消費税引上げはせっかくの景気対策を台なしにするのではないですか。軽減税率に必要なインボイスの導入も間に合いません。消費増税は少なくとも賃金の上昇とインボイスの導入時期に合わせるべきだと思いますが、総理の見解を伺います。
医薬品や医療機器の購入に関わる消費税を経営者が負担する一方、保険診療に消費税がかからない損税の問題について伺います。
医療は聖域だから消費税は課さないと決めたのは消費税3%の時代です。社会保障の為の増税で医療機関が倒産しては本末転倒ですが、どう対処されるのか、厚生労働大臣に伺います。
麻生財務大臣にもお尋ねします。
消費税引き上げは、麻生政権で決定された平成21年度税制改正法附則の文言が根拠とされました。経済状況の好転を前提として、消費税を含む税制の抜本的な改革を行うとの表現について、前提である景気回復が達成されていないと指摘すると、これはリーマン・ショック前の景気に戻るという意味であるとの説明を財務省から受けました。当時の認識について、麻生大臣に伺います。
これについて地方公聴会で尋ねたところ、リーマン・ショックとは都会の金持ちもようやく貧乏になったかというだけであって、地方においてはバブル崩壊以降ずっと不況であると言われました。これは地方の本音であり、自公政権は失われた20年に責任があります。
民主党を中心とする連立政権は期待外れだったかもしれませんが、それでも麻生政権から引き継いだ時、40兆円を下回っていた税収を43兆円にまで戻して安倍政権に渡したのです。この20年を総括した時、自公政権は何に失敗し、アベノミクスはどこが違うのか、総理に伺います。
金融円滑化法が今月末で切れるので、中小企業の倒産が心配されています。この法律は延命の時間稼ぎだと言われますが、景気が上向くまでつなぐ必要はあるのです。年間自殺者数はようやく3万人を下回りました。法律を打ち切る理由を金融担当相に伺います。
最後に保守とは何か、日本は何を守るべきか、総理にお尋ねします。
みどりの風は、日本の伝統文化に根差した社会構造、農耕民族として自然を敬い、共生し、富を分かち合う社会が日本であり、それこそが保守であると考えます。農業に国土を保全する多面的な役割があることを重視する民族です。欧米の市場原理主義は日本になじみません。豊かな自然資源を守る為には、使用済核燃料も増やせないのです。
憲法改正に反対ではありませんが、自衛隊を国防軍にする改正は反対です。民主主義における憲法には国民が権力を監視する意味があり、政府が改正を押し付けるべきではありません。
憲法について、守るべきものについて、総理の見解を伺い、質問を終わります。
ありがとうございました。