政治解説・コラム

「社会保障・税の一体改革」の真相②

投稿日:2012年6月8日 更新日:

<年金制度について>
政権交代が起きた大きな要因として、国民が民主党に年金制度改革を期待したことは無視できない事実だと思います。「子ども手当」と並んで「最低保障年金」は民主党のマニフェストの看板政策です。民主党が「消えた年金」問題を追及し、自公政権が訴えた「100年安心」のはずの年金制度は嘘だったとわかった時、国民は真剣に怒ったのです。だから最低保障年金7万円を期待して多くの人が民主党に1票を投じたと私は理解しています。今、自民党は最低保障年金を撤回して自民党案を丸呑みせよ、と民主党に迫っていますが、そもそも年金制度について政府ではどのような議論が行われたのでしょうか。

結論から申し上げると政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」において、最低保障年金についての議論はほとんどありませんでした。提案者である民主党から情報が出てこなかったのです。会議では有識者やメディア各社、各団体による社会保障制度への提言が行われたので、以下、年金部分を抜粋します。

基礎年金 所得比例部分
日本経済団体連合会 税方式
当面現行維持
段階的税負担引き上げ
税負担割合の拡充
経済同友会 税方式
保険料制度廃止
月7万円
積立方式・個人勘定
401Kのイメージ
日本商工会議所 社会保険方式 現状維持
日本労働組合総連合会 税方式
月7万円
富裕層は減額
厚生・共済年金を一元化
自営業者も加える。
朝日新聞 社会保険方式 厚生年金適用をパートらに拡大
毎日新聞 社会保険方式
基礎年金の廃止
最低保障年金を全額税で
月7万円
厚生年金適用を雇用労働者の9割に拡大
読売新聞 社会保険方式
低年金者に月5万円最低保障
厚生年金適用をパートらに拡大
日本経済新聞 税方式
共通年金月6.6万円
厚生年金のパート加入促進
産経新聞 社会保険方式
低所得者向け2万円上乗せ
厚生・共済年金を一元化
厚生年金適用をパートらに拡大

さて、現役世代が高齢者世代を支えるという現行制度(賦課方式)は、少子化の進行に伴い、騎馬戦型(現役2人が1人の高齢者を支える)から肩車型(現役1人で1人の高齢者を支える)に変わるとしばしば例えられますが、それでは賦課方式から積立方式(現役世代が自分達の将来の為に積み立てる方式)に変えることは可能なのでしょうか。

この点について、政府の会議に参加した慶応義塾大学の駒村康平教授は、「高齢化社会では積立方式にすれば対応できるというのは神話であって、ただちに持続可能な年金になるわけではない。経済成長がなければ、積立方式でも実質的な価値のある年金は給付できないし、成長があれば、賦課方式の年金でも持続可能である。賦課方式から積立方式への移行は困難」という見解を述べています。

政府の会議も有識者というオピニオンリーダーに左右されるので、結局誰も積立方式を積極的に主張せず、まずは「被用者年金の一元化」(=厚生年金と共済年金の一元化)という結論に落ち着きました。民主党案の「最低保障年金」については大串博志議員から発表がありました。出席者からは「最低保障年金の満額7万円は年収いくらの人までもらえるのか。」という質問がありましたが、大串議員は答えられず、「試算はない。」ということだったので、それ以上議論ができませんでした。ところがこの試算について、テレビ朝日の報道ステーションが極秘資料らしきものを公表し(昨年6月頃)、それによると年収260万円以上の人は給付が減り、690万円で給付がゼロになるということだったので、私は慌てて民主党に問い合わせたのです。ところがそんな試算は存在しないという一点張りで押し通し、昨年7月に「社会保障・税一体改革成案」は決定されました。けれども結局、今年2月に民主党が発表した試算はテレビ朝日の報道通りでした。

この時点で民主党は最低保障年金を諦めるべきだったと思います。少なくともわかったことは、民主党の最低保障年金制度は、低所得で年金を納められない人が最低保障機能として満額7万円受け取れるようになる一方、年収260万以上の人は現在より年金が減るということなのです。(当時の)国民新党としては、連立を組んでいる民主党の看板政策だから尊重してきたけれど、これでは実現不可能なので、正直に教えてほしかったとしか言いようがありません。連立与党なのにパートナーである民主党に騙された、という心境です。ところが政府は、実現見通しがない最低保障年金を大綱に入れたまま閣議決定しています。「平成25年通常国会へ法案を提出する。」とまで書き込んで閣議決定しているので、これを全面撤回するよう自民党は求めているのです。

自民党の要求は理解できますが、では現行制度を放置してよいのか、と言えばそんなことはありません。つまり今起きていることは、年金制度の議論は白紙のまま、消費税を倍にする、10%にするという談合です。私が消費税増税に反対する理由の一つは、肝心の社会保障制度は置き去りにして、何に使われるかわからない消費税の税率だけ上げるな、ということなのです。

ちなみに自公政権時代、年金の国庫負担を3分の1から2分の1にするという理由で定率減税が廃止されましたが、その増収分がきちんと年金財源に使われたかと言えば、そんなことはありません。(定率減税・消費税質問に対する質問主意書参照)与野党協議の結果はまだわかりませんが、野田政権も自民党も消費税をまず10%にすることだけ先に行い、社会保障は後から考えましょう、と言っているようなもので、これは全くおかしな話だと思います。

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