政治解説・コラム

「社会保障・税の一体改革」の真相①

投稿日:2012年2月11日 更新日:

<はじめに結論ありきだった>
国民の一番の関心事と言えば、やはり生活に直結する消費税の行方でしょう。地元に帰っても消費税についてはまず質問されます。それは経営者であれ年金生活者であれ、例外なくすべての人に影響するからです。売り上げが落ちるかもしれない、価格に転嫁できないから赤字になる、生活費が苦しくなる…。それぞれの理由で賛成できない国民も、「少子化だから」、「社会保障制度が崩壊するから」と言われればNOとは言いにくい心情になります。そこを巧みに利用しようと考えた政府が「社会保障・税の一体改革」というキャッチフレーズを作りました。

街頭インタビューで「年金が安心してもらえるなら消費増税も仕方ない。」という声を耳にします。私が当選した参議院選挙の時、国民の最大の関心は「消えた年金」と「後期高齢者医療制度」だったので、この感覚はよくわかります。社会保障というからにはまず「年金」であり、年金財源とは別に消費税を10%にする、年金についてはこれから考えるけれどもたぶん消費税はもっと上がるでしょう、と言われて黙っていられる国民がいるでしょうか。「消えた年金」と「後期高齢者医療制度」に怒った有権者が「最低保障年金」と「消費税は上げない」と約束した民主党に期待して政権交代を選択したのです。

私は菅政権時代に始まった「社会保障改革に関する集中検討会議」から「社会保障・税一体改革素案」の決定まで政府の会議に入っていたので、経緯を知っています。総理が変わり、大臣が変わり、民主党の政調会長が変わる中で、おそらく私だけが継続して一部始終を見ていました。

一言で言えば「社会保障・税の一体改革」は財務省の仕業です。麻生政権時代、平成21年度税制改正法附則104条で「平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取り組みにより経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、且つ段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行う為、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と財務省は書き込みました。日本語として私が普通に読めば、3年以内の景気回復も経済状況の好転も達成できなかった時点で前提が崩れており、加えて「消費税を含む税制の抜本的改革」と書いてあるのだから、単純に消費税率だけ上げるのはおかしいと思います。

ところが財務省は、平成23年度中、つまり平成24年3月中に消費税増税法案を提出しなければ法律違反だと言って、歴代の財務大臣と総理に迫ってきたのです。ギリシャ危機の時に財務大臣だった菅前総理は、財務省の説明を真に受けて消費税増税をやらなければならないと思い込みました。そこで自民党と同じ税率なら与野党協議ができると考え、消費税10%を突然言い出して参議院選挙で敗北したのです。それでも諦めずに今度は与謝野馨氏を担当大臣に引き抜きました。平成21年度税制改正法を決めた当時の大臣を任命すれば、自民党も断れないだろうという発想です。この時点で消費税10%という数字は実質上決まっていました。後は法案提出に間に合うように政府の会議を作り、「6月までに」、「12月までに」と期限を切って「はじめに結論ありき」の10%を決定できればそれでよかったのです。

社会保障に関する集中検討会議では税率について一度も議論されず、いつ議論するのかと尋ねると税制調査会が議論の場であるとする一方、与謝野大臣は消費税10%を発表しました。集中検討会議は社会保障制度設計の場、それを実現する為の財源論は税制調査会で議論するとしながら、税制調査会が始まると財務省が10%について議論してはならないと言い出しました。この時、副大臣から昇格して財務大臣を務めていたのが野田総理です。結局なぜ10%かという議論は一度も行われず、根拠もなく、政府は非民主的に消費税増税を発表しました。「消費税増税は誰が首相になっても避けて通れない。」という野田総理の言葉は財務省の夢を代弁しています。

<消費税増税以外は後回し>
一連の会議でわかったことがあります。デフレ不況の今、消費税を上げるべきではないという意見に対し、「デフレは悪いことばかりではない。」と財務省と内閣府がデフレを容認するのです。「日本は少子化でもう経済成長なんてしないのだから、移民でも考えない限り増税しか道はない。」、「物の値段が下がって助かる消費者や企業買収を進める日本企業を思えば、デフレはそう悪いことではない。」と本音では思っています。だから「日本銀行が国債を買い入れ、円を刷れば円高デフレ対策の一石二鳥になる。」と提言しても、必ず反対します。景気回復させて税収を上げようとか、消費税を上げたら消費が冷えて税収が伸び悩むとは考えず、デフレも放置しています。

消費税増税をするのなら複数税率にして、食料品や医薬品等は軽減税率にすべきとも言いましたが、「10%程度ならその必要はない。」の一言で財務省が切って捨てます。「税収が減る。」、「海外も日本の簡素な制度を実は羨ましがっている。」、「複数税率にするなら低所得者にお金を配る方が手っ取り早い。」と反論してきます。5%から10%とはつまり倍になるわけで、庶民には痛いのだという感覚がありません。10%とはたいした税率ではないそうです。

財務省の説明では社会保障費の(高齢化による)自然増に1%、年金国庫負担分2分の1の財源に1%、消費税増税による財務省負担分(政府も物品購入時に消費税増税になるから)1%、残りの2%が社会保障の機能強化、つまり消費税8%までは社会保障は変わりません。最低保障年金の財源は10%になってもありません。

これが社会保障・税の一体改革の真相であり、社会保障制度改革と一体ではない消費税増税案なのです。デフレ脱却や円高対策、景気回復をすべて後回しにして、野田総理は民主党内の異論も聞かず、国民新党の声も聞かず、ただ消費税10%に向けて突き進んでいるのです。

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