農林水産関係の基本施策に関する件
☆議事録☆
亀井委員
立憲民主党の亀井亜紀子でございます。
以前、参議院を一期六年務めましたけれども、このたび衆議院にかわるまでに四年のブランクがございましたので、その間に起きたこと、決まったことについて、私も十分情報を持っておりません。もしかしたら当たり前のことを聞いてしまうかもしれませんけれども、その点は御容赦願いたいと思います。
それでは、よろしくお願いいたします。
まず初めの質問は、先般の国会で廃止された主要農作物種子法についてです。
トランプ大統領になって、アメリカがTPPから離脱し、そして先日、TPP11が、アメリカを除いた形で、多くの懸念項目を凍結して、そして大枠合意に達したという報道がありました。
これで、政府としては、何となくやれやれという、そういう雰囲気が伝わってくるわけですけれども、私は、農政については、大事な部分が日米並行協議の中で進んで、その一部はTPP関連法として今もって進められている、そういうふうに感じております。
その最たるものが、この主要農作物種子法の廃止ではなかったかと思います。
私は、どうしてもこの種子法の廃止に至るその考え方が理解ができないので、まず質問させていただきます。
種子法の制定というのは、一九五二年の五月、サンフランシスコ講和条約が発効されたその次の月に制定されていますので、非常に歴史がありまして、ほぼ日本が主権を回復したのと同じタイミングで制定をされています。
その種子法のベースとなる考え方というのは、もともと種子というのは自然の中にあったもので、
人類の歴史の中で先人が改良を重ねてきた公のものである、新しい品種をつくるために、その素材となる品種、言いかえると遺伝資源は、
国や都道府県が公共の資産として持つ、そういう考え方に基づいていたはずです。
もしこれが民間に委ねられた場合に、遺伝資源をもとにして改良された新品種、それについて、その改良部分だけではなくて、種子全体に特許をかけて、
企業がその所有権を主張する、そういう危険性が指摘されていますけれども、ここでお尋ねしたいのは、
種子は公共の資産であるという、その考え方そのものの転換と捉えてよろしいでしょうか。
齋藤国務大臣
亀井委員には、私の方も丁寧に答弁をさせていただきますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。
種子に対する基本的な考え方ですけれども、稲、麦、大豆というのは、生命の糧となるものでありまして、我が国の土地利用型農業における重要な作物であります。
その生産における基本的資材である種子は、公共財的色彩も強いことですので、重要な戦略物資であるというふうに考えておりまして、この基本的な考え方は今後とも一貫して変わらないものだと思っております。
今回の種子法の改正は、一方で、稲、麦、大豆の種子につきましては、これまでは都道府県中心の制度となっている主要農作物種子法のもとでその生産、普及を行ってきたところでありますけれども、近年は実需者のニーズを踏まえた民間企業の品種も開発されてきているところでありますし、
今後は、都道府県のみならず、このような民間のノウハウも活用して、広域的、戦略的に種子の生産、普及を進めていく必要があるんだろうということで、改正、廃止に至ったわけであります。
ただ、これによって都道府県等における種子開発、供給体制が崩壊をするかというと、そういうことはございません。
私も、埼玉県の副知事で、農政を担当しておりました。自分たちが開発をした、宣伝になるかもしれませんが、彩のかがやきというものについては、種子法が廃止されてもしっかりこれは取り組んでいくということに変わりませんし、予算面での不安もあったようでありますので、この点も、総務省ときっちり、交付金の話は継続できるように努力をしていくということでありますので、
何か、この種子法の改正によりましてその辺の体制が大きく崩壊をしていくという誤解もあるようでありますけれども、そういうことはないということは強調させていただきたいと思います。
亀井委員
附帯決議で、予算は従来どおり確保していくということが書き込まれたようですけれども、ただ、根拠法がなくなってしまうので、都道府県が予算をつけるかどうか、それはその県の意思がかなり絡んでくることだと思うんです。
ですので、例えば北海道などは条例で対応しよう、そういう動きもあるようですけれども、やはり私は、廃止をする、しないで違いは出てくると思います。
廃止をされた背景として、先ほど大臣がおっしゃいましたとおり、民間の参入、民間参入の障壁になっているというような指摘もあったようですけれども、
そもそも、都道府県と民間企業が競争する必要があるのでしょうか、この主要農作物の分野において。お尋ねいたします。
齋藤国務大臣
これは先ほどお話ししたこととかぶるわけでありますけれども、食糧の増産が必要だというところから、都道府県に原原種の生産を義務づけたりするというのが種子法の趣旨であったわけでありますけれども、
その後、民間での開発ですとか、それから、相互に協力し合いながらやっていく必要性というのも出てきているということでありますので、環境変化に応じてそういう法的対応をとらせていただいたということであります。
結局のところ、この廃止によりまして、都道府県が先ほど申し上げたような奨励というものをやめてしまうんじゃないかとか、そういうところの御懸念でありますけれども、この法案をつくる際にも、ここでも大分議論しましたけれども、都道府県にもどうなりますかという意見照会をしておりまして、その結果、問題はないということになっておりますし、
それから、繰り返しになりますけれども、予算についても、しっかり我々としても確保できるように努力をしていくということでありますので、都道府県が今まで努力をしてきたものを一気に、お金もかけ、手間もかけて開発してきたものを一気にこれから手を離すということも考えにくい。
ただ一方で、民間にもそういう芽が出てきているので、そっちも生かせるような仕組みにしていかなくちゃいけないということが趣旨でございます。
亀井委員
どうしても民間企業、利益を追求するわけですから、そういう観点で物事を進めていったときに、多種多様なものをつくるというよりは、一つのものをたくさんつくるというような、そちらに向きがちだと思います。
ですので、農水省として注意深く各県の動向を見ていっていただきたいと思います。
私はまだ、食の安全ですとか遺伝子組み換え、種子のことですとかいろいろ懸念していることはございますけれども、きょうは時間がないので、ここでやめたいと思います。
次の質問に移ります。
先ほど、ほかの方々も、減反廃止に伴う直接支払交付金の廃止について質問をされていました。私も、少し頭の整理をしながらこの質問をしたいと思います。
減反制度、減反が日本の農業に何をもたらしたのか、どう評価するかというのは一概には言えない、必ずしもよかったとも言えないわけですけれども、
ただ、この減反を廃止するという議論の出発点が何であったのかということを伺いたいんです。
つまり、米農家の経営安定を図るために価格を維持するという政策をしてきた中で、米の消費が減ってしまったので、それに伴って、転作は奨励はしてきたけれども、耕作放棄地もふえてしまった。
そして、農業が衰退していく中で、減反はどうであったのだろうという見直し、そういう視点が入り、そして、それを転換するのであれば、恐らく、少々米の値段が下がっても、農地を集約して大規模につくってたくさん売れば、消費者にとっては安く米が入るし、たくさん売れれば価格が下がった分は何とか賄えるだろうという発想のもとで転換をしたということであれば一つの考え方なんですけれども、
そうすると、今度、私の地元のような、島根県、中山間地です、
では中山間地の競争条件が適さないところはどうなるのでしょうか、当然そういう視点が入ってまいります。
今現在そのような不安を抱いている農家はたくさんあるんですけれども、まず、今回の政策転換の出発点についてお尋ねいたします。
齋藤国務大臣
大変本質的な御指摘をいただいたと思います。
米政策の転換の背景といいますのは、今まで四十年間生産調整をやってきているわけでありますが、これから日本の人口がどんどん減っていくということなんですね。
まだ年間二十数万人ぐらいの減少にとどまっておりますけれども、いずれこれが年間八十万人とかそういうペースで、より一層急激な人口減少に見舞われるというのが、もうこれは火を見るより明らかな状況になっています。
そういう状況のもとで、今までのように、国が、来年の生産量はこのくらいになりますね、だからどこどこ県はこのくらいにしてください、どこどこ市町村は幾らです、あなたは幾らですということを続けておりますと、配分されるお米の生産量というのが毎年毎年減っていくということになるわけです。
これからさらに人口が減っていくことになりますと、このやり方は、毎年毎年生産量は減っていくわけですから、いずれどこかで崩壊をする。守れなくなる人が出てくるなりして混乱が生じるだろう。
そういうことが起こる前に何とか新しい環境に円滑に転換できないかというのがそもそもの背景でありますので、できるだけ需要に見合った生産をしていただく、そのために主食用米の生産は減っていく。
しかし、その分は、水田は重要なので、水田はフル活用していく必要があるだろう。
これは食料安全保障の観点からも重要だと思いますので、そのためには、さっき、食べないお米という刺激的な表現を使いましたけれども、
家畜が食べるお米を生産していただくことによって水田も維持でき、そして適切な助成の水準を決めることによって所得も維持できというようなことで、この割り当てをしていくことによる、将来のこのやり方が崩壊する前にうまく円滑に転換できないかというのが、そもそもこの米政策の見直しの背景にあるということであります。
中山間地の話は中山間地の話でしっかりやっていかなくてはいけないということだと思っておりますので、長くなるといけないんですけれども、
三十年産から米の直接支払交付金が廃止されるんですけれども、引き続き、水田のフル活用を進めるための政策は中山間地域には手厚く回るようにするとか、さまざまな工夫をしながら、中山間地域は中山間地域の農業の展開にできるように努力をしていかなくちゃいけないというふうに考えております。
亀井委員
飼料用米ですとか米粉の需要拡大、そして、そちらに転作を奨励している、そちらの交付金を拡充しているということは承知しているんですけれども、来年度からの生産調整の廃止を見据えて、もう既に飼料用米に転換している農家がたくさんあります。
そして、最近報道されていることは、むしろ食用の米の価格が上がって、先ほど御指摘がありましたように、外食用の米が少し不足ぎみであると。
そして、今まで生産調整に使われていた補助金が飼料用米の方に使われていくということになったときに、今度、逆に、主食用の米が足りなくなったり、不必要に高くなったりして、
最終的に、では、外食産業用の安い米を輸入するですとか、そういう本末転倒なことになりはしないかと心配しているんですけれども、そのような心配はないでしょうか。
齋藤国務大臣
考えようによってはそういうこともあるかもしれませんが、ただ、今も、今の政策においても、一応生産数量というものは配分させていただいておりますけれども、それは強制ではありませんので、いずれ需要が下がっていったときにどういうことが起こるかということについては、今の制度を持続したところでもいろいろな問題は起こってくるんだろうと、守れない人がふえてくるということでありますので、思っております。
中食や外食の人たちが、今の状況においても、お米の値段についてかなり高過ぎるという要請をいただいているのも事実でありますが、いずれにしても、このミスマッチの解消に向けて、需要に基づいた生産ができるようにマッチングの努力をするとか、そういう形で農水省は努力をしていきたいなというふうに思っております。
亀井委員
もともと食料自給率が四割に満たない国で、米に関しては食用をほぼ賄えている、そういう日本で、逆に米の輸入が始まるようなことだと、本当に何のためにこの政策を打ったのかわかりませんから、その辺はよくよく状況を見て、早目の修正をお願いしたいと思います。
では、次に、森林環境税についてお伺いをいたします。
私は、参議院のときに、農水委員会に三年、環境委員会に三年おりました。農水省は当時から森林税が欲しいと言い、環境省は環境税が欲しいと言っておりましたから、このたび、それが結びついて、森林環境税という仕組みになったのだろうと推測をしております。
また、私の地元の島根県はもともと林業が盛んなところで、中国ブロック全体がそうですけれども、ですので、県の要望としても、森林税が欲しいということは言われておりました。ですので、基本的に、私はこの森林環境税というのは必要なものだと思っております。
ただ、このたび、この税の設計を見たときに疑問に感じたことは、個人住民税の均等割という枠だと聞いておりますけれども、最近、今度消費税も上がりますし、国民に広く負担を求める税金が、非常にその割合が増しているように感じます。
法人税が下がって消費税が上がるというような中で、もう一つこういった税金ができたときに国民がどう受けとめるかということと、それから、個人の所得が上がらない、だから個人消費が伸びなくて、景気も回復しないというような環境の中で、
この消費税が上がるタイミングで森林環境税をまた上乗せしていったときに経済情勢がどうなるか、そういう心配は議論の中でも出てくるんじゃないかと思っているんですが、
この森林環境税の制度設計の中で、例えば企業に少し負担を求めるですとか、そういう企業負担の部分ですとか、ほかの制度設計というのは全く議論されなかったんでしょうか。その経緯についてお伺いいたします。
齋藤国務大臣
森林環境税につきましては、森林政策面は林野庁、それから、税制面は総務省という役割分担で、両省庁協力しながら検討を今進めているところであります。
それで、税制面の検討に当たりましては、総務省の地方財政審議会のもとに設置された検討会におきまして制度設計の議論が進められ、公表された報告書では、今御指摘の点についてはこのように記されているところであります。
森林整備等による効果が国民に広く及ぶものであることを踏まえ、必要な負担を国民一人一人が広く等しく分任する仕組みとすることが望ましいことから、そのコンセプトに最も合致するものとして個人住民税均等割の枠組みを活用することを基本とするとともに、
御指摘の法人に関しては、産業界はこれまでも自主行動計画等の枠組みの中で、温室効果ガスの排出削減を実現するとともに、地球温暖化対策のための税も既に負担をしているということなので、地球温暖化防止への取り組みに貢献していると考えられること等を勘案して、森林環境税によってさらなる負担は求めないこととすることが妥当、総務省の検討ではそのようにされています。
農林省としては、この報告を踏まえまして森林環境税の議論が今後進められていくことが望ましいとは考えておりまして、地球温暖化防止に向けた温室効果ガス削減目標の達成などを図るために、三十年度の税制改正において税の創設という結論が得られるように全力で取り組んでいきたいというのが、今、我々の考えであります。
亀井委員
三十年度に結論を得るということで、今まさに議論の真っ最中かと思いますけれども、それでは、現在のところの見通しと、もしその結論が得られなかった場合はどのような展開になるのかということも含めて、お答えいただける範囲でお答えいただきたいと思います。
齋藤国務大臣
大変嫌な質問だなと思いますが、今、私の部下の林野庁を中心に一生懸命やっていますし、総務省も一生懸命やってくださっていると思っておりますので、今の時点で、できなかったらどうするかというのをその責任者である私が申し上げるのは、余りにせつないなと思っております。
亀井委員
お答えいただき、ありがとうございました。