昨年から議論を積み重ねてきた立憲民主党内の郵政ワーキングチーム(原口一博座長)は提言を取りまとめ、武田良太総務大臣と赤沢亮正内閣府副大臣(金融)を訪ねて申し入れを行いました。私はこのワーキングチームの座長代理を務めており、WTの立ち上げを働きかけたところから関わってきました。郵政解散を契機に結党した国民新党の出身なので、このテーマは私にとって一丁目一番地なのです。
郵政民営化後、トール社の買収で巨額損失を出したり、かんぽの不正販売問題が起きたり、集配局の統合、土曜日の配達を取りやめる等、経営面でも利用者にとっても、サービスがよくなったとは言い難い、負の側面ばかりが目立ちます。そもそも郵政民営化をする必要はありませんでした。ただ株式の売却が始まっている以上、民営化前に戻すことは不可能であり、全株売却からでは立て直しができない為、現実的な提言になっています。
都市部でも過疎地でも全国一律に貯金・保険・郵便のサービスを行うというユニバーサルサービスは、金融2社(貯金・保険)が郵便局にその業務を委託すると決め、その委託手数料で日本郵便の経営は成り立っています。つまり今後、金融2社について株式の売却が進み、物言う株主が「なぜ儲からない過疎地の郵便局に貯金、保険の業務委託をするのか」「業務委託をやめてしまえ」と言い出したら、過疎地の郵便局は軒並み閉鎖されるでしょう。また金融2社の株式売却が進むと親会社の日本郵政の魅力がなくなり、親会社の株価が下がるという矛盾を抱えています。(米国が対日要望書で繰り返し求めた郵政民営化の真の目的は、貯金・保険分野の日本の資産を民営化による株式売却で市場に吐き出させることにありました。)現行法に金融2社の全株売却の方針が書き込まれている以上、その方向で政府は努力しようとするので、3事業が一体的に経営できるよう(ユニバーサルサービスを守るため)日本郵政が金融2社の株式を3分の1保有することとしました。これはもともと、民主党連立政権が閣法として提出した法案に近いものです。(現行法は議員立法として自公の修正が入って成立しています。)
今、過疎地の郵便局は行政事務の委託サービスを始め、皮肉なことに民営化されてから一層、公的な役割が増えています。これまで国民の税金を一切使うことなく運営されてきた郵便局のサービスを存続させるためにも、法改正が必須です。今回の提言を機に民営化を進めた自公両党内の議論が再開されることを期待します。