【平成29年度補正予算案反対討論】
立憲民主党・市民クラブの亀井亜紀子でございます。
私は、ただいま議題となりました平成二十九年度補正予算案について、反対の立場から討論を行います。
まず初めに、政府・与党の極めて横暴な国会運営に抗議します。
今さら言うまでもありませんが、国会は国権の最高機関、唯一の立法機関であり、行政の責任を受けとめる機関です。そして、その国会は、憲法四十三条にある通り、「全国民」の代表によって構成されています。当然、そこには多様な価値観があります。
本来、国会とは、政府が反対者を含む「全国民」の代表に向き合い、野党の厳しい質問に耐えることによって、その正統性を確保する場であります。ところが、政府・与党は、先の特別国会から慣例を破り、野党の質問時間の削減を執拗に求めているのです。
予算案も法案も、国会に提出された時点で与党による事前審査は終わっているはずです。言いかえれば、政府・与党が一体となって提出しているのに、なぜそんなに質問時間が必要ですか。正当な理由なく与党の質問時間を増やすということは、与党に対してさえ、この政府の正統性は疑わしいという意味を持つことにお気づきですか。
若手議員に質問の機会をつくりたいというのは党内の話であって、憲法によって政治権力を縛るという立憲主義とは次元の違う話です。官邸が国会運営に口を挟んでいるのか、与党が官邸に忖度しているのか、内情はわかりませんが、国会は政府の下請機関ではありません。国会を軽視する安倍政権に重ねて抗議するとともに、与党に対して、立法府の役割を果たすように強く求めます。
さて、間もなく確定申告の時期がやってきます。昨年は、約二千百七十万人もの方々が確定申告書を提出しました。領収書の保存や帳簿の記載について厳しい指摘を受ける時期であり、最も税への認識が高まる時期と言ってよいでしょう。徴税現場の税務署職員も多忙をきわめ、そうした方々の御苦労、日々の業務の積み重ねの上に、こうして平成二十九年度補正予算は編成されています。
ところが、時を同じくして、その徴税制度への信頼が著しく損なわれる事態に直面しています。森友学園の問題です。
昨年、国有地が不当に安く売却されたのではないかと国会で追及した際、当時の佐川理財局長は、「交渉記録はない」と繰り返していました。ところが、近畿財務局が交渉経緯を記した文書を保有していたことが最近明らかになりました。
また、森友学園と価格調整はしていないと答弁したにもかかわらず、「売買金額の事前調整に努める」との方針が財務局の内部文書に記載されていることも明らかになっています。つまり、国会答弁は嘘だったのです。
その嘘を積み重ねた人物が、あろうことか、徴税の責任者である国税庁長官に栄転しています。これでは国民が税金を納めようという気になりません。
国の財布に八億円の穴をあけ、国会で堂々と嘘をつき、そのことが判明しながら記者会見もしない。責任もとらない。この人事について、総理の御見解は「適材適所」とのことですが、嘘の答弁をする人物が「適材」で、その「適所」が国税庁長官とは、国民を馬鹿にしているとしか思えません。
そもそも、税の責任者として予算委員会に出席できないような人物をなぜ任命したのですか。ほかに幾らでも優秀な人材はいるはずです。
総理、佐川国税庁長官は一刻も早く更迭すべきです。そうしない限り、この問題は延々と続き、税への信頼、政府への信頼がますます失われていくでしょう。時間がたてば興味が薄れるだろうとお考えなら甘いです。ひど過ぎます。
次に、補正予算案へ計上されているTPP対策予算について申し上げます。
TPP対策費については、平成二十七年十月の大筋合意以来、数次にわたる補正予算で、これまで約六千億円を超える対策費が投じられてきました。
農業の体質強化の必要性は当然理解します。経済連携によらずとも、農産物の輸出入は増加を続け、近隣諸国も含め、広い商圏をターゲットにした農業を実現する動きが始まっています。生産技術強化、輸送技術の向上、品質向上に向けた支援の強化は、現場から強く求められており、そのため一定の国費を投じることを否定はいたしません。
しかし、平成二十七年十月の大筋合意のときに試算された農林水産物の生産額への影響は、最大二千百億円程度と試算されていたはずです。ところが、その三倍にも及ぶ対策費が既に投じられております。さらに、今次の補正予算案では三千億円近い額が投じられ、これまでの対策費は総額一兆円に迫る勢いです。一体、これまで投じられた六千億円の効果はどのようになっているのですか。
農業の体質強化が必要であれば、堂々と本予算に計上し、議論すべきです。補正予算を抜け穴に農林水産関係予算が膨張を続けることについて、説明が足りません。
例えば、農地のさらなる大区画化とありますが、農地の集約は相当進んでおり、これ以上広げても受け手が足りないという状況が発生しています。集約に適さない中山間地の農業はどう守るのでしょうか。
コメ政策については、政府は、今年から生産調整、いわゆる減反政策をやめるという大転換に踏み切りました。
自由貿易を推進する先進諸国は、関税を下げる代わりに、生産者に対して所得補償をしています。輸出補助金まで支給し、実質的な価格のダンピングによって輸出強化している国もあります。
かつての民主党政権は戸別所得補償を導入しましたが、自公政権になって廃止されました。では、今年から、価格調整もせず、所得補償もしないのですか。
政府は去年、主要農作物の種子法を廃止しましたが、先祖伝来の種子を守る予算は削減するのですか。
このように、幾らでも論点があり、本質的な議論が必要です。
さて、補正予算について自治体の陳情が重なる時期ですが、地方交付税を削減し、自治体の基金を使わせようという動きに警戒感が広がっています。当然、財政状況は各自治体で異なり、裕福なところばかりではありません。特に地方においては、急激な人口減少に直面し、何とか踏みとどまっている状況です。
基金をターゲットにするということは、節約に励む自治体の自助努力を減退させることにもつながりかねません。霞が関にありがちな全国一律の対応はしないように強く求めます。
防衛予算についても一言申し上げます。
北朝鮮の挑発行為に緊張が高まっていますが、どこまで装備すれば万全と言えるのかという問いに答えはないでしょう。それは多分に心理的なものであり、核のボタンを実際には押せないように、壊滅的な武器は国を滅ぼします。
北朝鮮は弾道ミサイルの開発に取り組んでいますが、そのターゲットはアメリカであり、少なくとも安保法制が成立するまで、そして昨年、原子力空母カール・ビンソンと自衛隊が共同訓練するまでは、日本がターゲットにはなっていなかったはずです。
ところが、今、日本は北朝鮮に対して、アメリカとともに作戦に参加するぞというメッセージを発してしまっています。そんなことはないと総理はおっしゃるでしょうが、あくまでも相手の国にとって日本がどう見えるかという問題です。当然、どの国も最悪の事態に備えます。
最近、私は、交流のあったトルコの外交官を思い出します。イラク戦争のとき、トルコは基地の提供をアメリカに求められましたが、断りました。そのことについてトルコの外交官は、イラクは隣国だからずっとつき合わなければならない、戦争が終わったら立ち去るアメリカとは違うのだから、基地の提供はできないのだと言いました。
これを日本に置き換えたとき、米軍基地は既に存在しているので、いかにして北朝鮮とアメリカの戦争に巻き込まれないようにするか、日本が戦場にならないようにするかという視点が必要です。それが国を守るということだと私は思います。
そうした観点で考えたとき、今回の補正予算がふさわしいものであるのか、専守防衛の枠を超えていないか、議論が尽くされたとはとても思えません。
まもなく本予算の審議が始まります。補正予算からも安倍政権の方向性は見えますが、本予算は、それこそ野党に時間が必要です。
安倍総理の悲願である憲法改正、外交、安全保障、原子力政策、TPP、農業政策、働き方改革等のテーマに加えて、森友、加計問題、スパコン、リニアに関する疑惑、さらには茂木大臣の公職選挙法に関する問題など、追及したいことは山ほどあります。
与党の質問は、沖縄に対する冒涜発言など、政府の失言に対する言及はありますが、本質的な議論からはほど遠いものです。そもそも、賛成予定の予算案や法案に厳しい質問はできないのです。
補正予算の審議においては、分刻みの交渉の末、私たちは時間を譲歩しました。時間を余らせるのであれば、野党に返してください。
国会における議論の活性化を期待し、私の反対討論といたします。
御清聴ありがとうございました。