活動報告(ブログ)

2018年11月29日(木) 衆議院本会議

11/29の衆議院本会議において、漁業法案の反対討論を行いました(約10分)。以下ビデオライブラリーにてご覧いただけます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48509&media_type=

平成30年11月29日 衆議院本会議議事録(文責:亀井事務所)

○亀井亜紀子君 立憲民主党・市民クラブの亀井亜紀子です。
私は、ただいま議題となりました漁業法等の一部を改正する等の法律案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)
冒頭、一言申し上げます。
本日、憲法審査会が強行に開かれました。極めて遺憾であり、この場においても断固抗議します。
憲法審は、これまで与野党合意のもと行われてきましたが、まさに前代未聞の強行開催です。先週も、野党幹事が法務委員会で質疑中にもかかわらず幹事懇を強行開催しようとするなど、与党は議会人としてあるまじき行為を繰り返しています。憲法の議論を行う前提すら理解しない議員に、憲法を論じる資格は全くないことを申し上げ、討論に入ります。
本法案に反対する第1の理由は、本法案の質疑時間が十分に確保されず、採決ありきで進められた与党の強引な国会運営にあります。
漁業というなりわいの根幹にかかわる漁業権や資源管理に関する本法案は、本来、臨時国会ではなく通常国会で慎重に審議されるべきものでした。
70年ぶりの改正です。法律案関係資料は電話帳のように分厚く、一部改正どころか新法のような法律です。少なくとも、浜を視察し、地元の漁協の意見を聞き、地方公聴会をし、参考人質疑をし、手続は踏んでくださいねと何度も与党の理事に申し上げましたが、参考人質疑以外、実現しませんでした。その参考人質疑も、定例日ではない月曜日に急遽行い、翌日から3日間ある定例日を使い切らずに採決したのです。
委員会での趣旨説明からたった1週間、2カ月かけて審議された農協法の改正と比べても、余りに短過ぎます。ちなみに、質疑時間で比較すると、農協法は32時間25分、漁業法は野党の欠席分も含めて13時間50分です。農業とは予算が10倍も違うのだから、そんなに時間はかけられないという発言が与党の理事から飛び出しましたが、漁師さんが聞いたら怒ると思います。漁業軽視と言わざるを得ません。
第2の理由は、漁業者の理解も不十分だからです。
そもそも、今回の改正は誰のためなのでしょうか。
さきの国会で成立した卸売市場法の改正と同様に、本法案も、政府の規制改革推進会議の提言によって進められたものです。漁業権を岩盤規制と決めつけ、密室でつくられた法案に、漁業者の理解が得られるとは到底思えません。
法案作成過程で政務三役が一度も浜に足を運んでいないことも明らかになりました。水産庁は現在までに99回説明会を行ったとのことですが、それでも改正内容が伝わっているのは一部の漁連の役員であり、地域の漁協までは情報がおりていません。
立憲民主党で北海道の漁連と意見交換し、なぜ法案を受け入れたのかと尋ねたところ、3,000億円の水産関係予算が決め手だったと言われました。本日、本会議に上程されたEPAにしても、TPPにしても、かつてのウルグアイ・ラウンドにしても、大型予算をつけて生産者に理解を求めるのは政府の常套手段ですが、恒常的な制度変更と単発の予算が見合うわけはなく、今回もまた第1次産業が衰退するのではと危惧しています。
食料自給率が4割に満たない国です。古くは兵糧攻め、現代では食料安全保障と言われる概念に照らし合わせれば、日本の現状は危機的であり、これでは国民を守れません。
第3の理由は、本法案が、70年かけて達成された漁業の民主化に逆行するものだからです。実際、漁業法の第1条、法律の目的条項から、漁業の民主化という文言が削除されています。本改正で、漁業権は漁協から切り離されます。地元への優先順位規定は廃止、海区漁業調整委員会の漁民委員の公選制も廃止され、知事による任命制となります。
今後は、漁協を通さず、知事から直接免許を受けた企業が浜に参入してくるかもしれません。漁業調整委員会も、知事に近い人物を委員に任命すれば、公平に機能しないでしょう。何より、漁業権の付与に際し、水域を適切かつ有効に活用するという、いかようにも解釈できる曖昧な基準は、恣意的運用を可能とし、知事の裁量権を不必要に拡大します。まるで、羽織漁師と言われた明治の網元が知事に成りかわったような法律です。
第4の理由は、TAC、漁獲可能量とIQ、いわゆる個別割当てを用いる資源管理の導入が日本の沿岸漁業を衰退させるおそれがあるからです。
そもそもIQとは、個人主義の欧米で、先取り競争を防止するために生まれた制度です。
例えば、10隻の船があり、100トンのTACが設定された場合、日本であれば、1隻10トンのIQを割り当て、おおよその出漁日数を定め、自主的に管理できるでしょう。ところが、外国では、我先にと魚をとり、1カ月間の漁期の最初の1週間でとり尽くすようなことが起きました。水揚げの集中による魚価の低迷や加工処理能力が追いつかないという問題が発生し、IQが導入されたのです。互いに助け合う日本の漁村には必要ない制度です。
また、TACは、沖合で魚群を探知し、まき網で根こそぎ捕獲するような漁業に対して適用すべきものです。ところが、政府は沿岸漁業も対象としています。無理に進めれば、浜は大混乱するでしょう。
現在でも、沿岸の定置網にTAC魚種のクロマグロが入り、漁師を困らせています。水産庁は法令違反だと言いますが、とることも売ることもできず、困って海に捨てているのです。
今後、TACの対象が漁獲量の8割にまで拡大されたら、定置網の漁師は一体何をとればよいのでしょうか。日本の沿岸は、多種多様な魚が生息し、網にかかる魚を選ぶことはできません。
また、今回の法改正では、船のトン数制限もなくなります。そのかわりにIQが導入されるわけですが、何を基準に今後の割当てが決まるのかが不明です。沖合の大型船、すなわち資本力のある企業にIQが集約されれば、漁村は衰退し、人口はますます都市部へ流出するでしょう。
企業に対する外資規制がないことも問題です。
漁村、漁業には、浜を守り、海を守り、領土、領海を守るという多面的な機能があるのです。
最後に、日本が抱える領土問題である竹島について触れておきます。
竹島は、映像で見てもおわかりのように、居住できる島ではありません。では、なぜ島根県が竹島の返還を求めるかといえば、これは漁業問題なのです。
1998年に新日韓漁業協定が締結され、日本海に暫定水域が設定されました。これをなくしてほしいという運動が、竹島の日の条例の制定につながっています。
つい先日、能登半島沖で、日本漁船と韓国漁船の衝突事故がありました。
日本海の漁師にとって、暫定水域と韓国漁船の問題は切実なのです。
本法案は、漁業の機能が水産物の供給に偏り、漁業の多面的な役割、すなわち漁村の振興や安全保障という発想が欠落しているという致命的欠陥があります。以上の理由から本法案に強く反対し、討論を終わります。(拍手)

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