【7/18衆議院本会議】
公職選挙法案の反対討論の模様を、以下ビデオライブラリーにてご覧いただけます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=48361&media_type=
平成30年7月18日 衆議院本会議議事録(文責:亀井事務所)
○亀井亜紀子君 立憲民主党・市民クラブの亀井亜紀子でございます。(拍手)
初めに、このたびの西日本豪雨で亡くなられた方々に対し哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
この際、一言申し上げます。
本日の本会議は、古屋議運委員長が職権で強引に立てたものです。事もあろうに、その古屋委員長御自身に、政治資金収支報告書にみずからのパーティーの収入を過少に申告したという、事実であれば到底見過ごすことのできない内容の報道がされております。
それに対し、納得できる丁寧な説明、証拠となる資料の提出があったとは聞いておりません。
古屋委員長の責任は極めて重大です。国民の納得も何もないままでの議運委員長の職権による本会議立てに強く抗議します。
それでは、ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、反対の立場から討論を行います。
本来、このような大規模災害のときは被災者支援と復興に集中し、不要不急の法案は審議しないものかと思いましたが、政府の対応には残念としか言いようがありません。初動のおくれが指摘されているにもかかわらず、国土交通大臣はカジノ法案に時間を費やし、降って湧いたような自民党の選挙制度改正案を今まさに数の力で押し通そうとしています。
私は、現在合区となっている旧島根選挙区選出の参議院議員として、2007年より6年間、国会に籍を置いていました。その間、参議院選挙制度改革にかかわり、国会を離れている間に島根、鳥取が合区になりました。島根県だけでも東西200キロ以上と細長く、高速道路は途切れ途切れで、加えて隠岐諸島もあります。結局、私は衆議院にくらがえを決め、前回の参議院選挙は合区の候補者を応援したのですが、選挙区は広く、候補者は少なく、市町村合併で投票所も少なくなり、本当に盛り上がらない選挙でした。これでは有権者の関心が薄れ、投票率も低下していくでしょう。
まずは島根県民として申し上げます。
私たちは、あくまでも合区の解消を要望しています。なぜなら、行政の単位は47都道府県であり、人口が少ないからという理由で独立した県としてみなされない、隣県と合わせて1つと数えられるその扱われ方に納得いかないからです。合区対象がもっとふえればよいだろうとか、拘束名簿で実質的に県代表を確保するからよいだろうとか、そういうごまかしを求めているわけではありません。むしろ今回の場当たり的な改正案は合区を固定化してしまうリスクをはらんでいます。島根県民が求めているのは理念に基づく抜本的な改正です。
参議院において1票の格差解消に真剣に向き合い、抜本的な選挙制度改正に取り組んだのは亡き西岡武夫議長でした。志半ばで平成23年11月に逝去され、司令塔を失ったことで選挙制度改革は振出しに戻ってしまいました。私は、当時所属していた政党の担当者として、その経緯を知っているので、この際、その一端を御紹介したいと思います。
西岡議長が選挙制度改革に取り組んでいた当時は1票の格差が5倍あり、訴訟判決は違憲状態、いよいよ最高裁で違憲判決が出るのではという危機感がありました。そこで議長は有識者やメディアの論説委員に意見を求め、現行憲法で各県代表を維持する方法をまずは模索しました。議長の地元長崎県も佐賀県との合区案があり、合区対象の県民の気持ちをよく理解していたからです。
アメリカの上院は、人口にかかわらず、各州2人ずつ代表が選出されます。同じような方法がとれないものかと考えたのですが、連邦制のアメリカの州と日本の都道府県では位置づけが異なるので最高裁の法廷に耐えられないと判断し、憲法改正しか道がないと諦めました。
そうして提示された最初の議長案は、全国を9ブロックに分ける比例代表制でした。もちろん各党の反発は大きく、全国比例を残してほしい、衆参で同日選挙があったときは混乱する等の意見を受け、議長案は修正されていきます。最終的には、総定数232、全国比例82、選挙区選出150、衆議院と同じ11ブロックの選挙区を採用し、1票の格差は2倍以内という私案をまとめられます。私はこの案の説明を受けましたが、各党に説明に回る最中に議長が亡くなられたので、結局未発表となり、選挙制度改革は振出しに戻ってしまいました。
西岡議長案は、政党から中立的な立場で提示された一つの建設的な提案だったと思います。
今、合区解消を求めている島根県民も、大きな理念に基づいた提案であれば、県単位の選挙制度に必ずしもこだわらないでしょう。もちろん、人口の少ない地域の声が届きにくくなるという不満は常にあります。それでも、乱暴に隣り合わせの県をくっつける合区よりはまだましです。今回の改正が合区の島根県のためだとは言わないでいただきたい。地元では大して評価されていません。
今、求められているのは抜本改革に向けた議論です。少なくとも、憲法改正によって解決するのか、それとも憲法を改正せず選挙制度の抜本改革で対応するのかという議論を与野党で始める必要はあるでしょう。
そもそも、今回の選挙制度改正には大義がありません。なぜなら、前回の参議院選挙について、去年の最高裁判決は合憲だからです。それまでは、平成25年選挙、28年選挙を迎えるに当たって違憲状態だったので、国会が違憲状態のままの法律で選挙に向かうことはあり得ないから急ぐ必要がありました。だから、西岡議長も次の選挙に間に合わせようと急いでいた。けれども、直近の判決は合憲ですから、今急いで強引に押し切る話ではないのです。
先日、参議院で参考人として出席した脇雅史元参議院議員が、参議院選挙というのは2回で1回だから、今ある合憲の法律でもう1回選挙をやればいい、むしろ抜本改革こそ出すべきだと発言されていましたが、それも一理あると思います。
憲法改正については野党が反対するためできないのだと自民党は主張するかもしれません。けれども、立憲民主党について申し上げれば、我が党は憲法を一字一句変えてはいけないという政党ではありません。例えば、臨時国会の開催要求について、憲法53条には何日以内にというような規定がないので、昨年、政府は野党の開催要求に応えず、ようやく召集したと思ったら即日解散しました。53条は改正の必要があると考えます。また、イギリスで2011年に成立した議会任期固定法のように、総理の解散権の制約も検討しています。
総理は日本国憲法を押しつけ憲法だと言いますが、GHQ原案では国会は一院制でした。それを二院制にしたのは日本の意思です。ただ、急いでつけ加えたので衆議院と参議院の役割を明確化できなかった、そこは欠陥だと言われています。
衆議院と参議院はそれぞれどうあるべきで、そのためにはどういう選挙制度がふさわしいのか。選挙のたびに1票の格差が最高裁で争われ、違憲状態の判決に立法府として異議があるならば、違憲だと言われる部分から憲法改正の議論を始めればよいのです。それをしないのは、合区の是正も抜本改革も実はやる気がないとしか思えません。
憲法9条の改正や緊急事態条項の創設等、与野党が最も対立するところから始め、時間切れを狙って国会終盤に与党に都合のいい改正案を突然出す。そして、対案を出せと要求する。理念も何もなく、拘束名簿と非拘束名簿が混在する筋の悪い法案で、しかも定数増までおまけについている。議員定数削減を条件に消費税を上げるのだと聞いていた国民にどう説明するのですか。国民の理解が得られるとはとても思えません。
そして、何より、民主主義の根幹である選挙制度まで与党の数の力で押し切ることは議会制民主主義の破壊です。安倍政権の横暴に強く抗議し、私の反対討論といたします。(拍手)